世界の結核と対策

 世界では人口の約3分の一が結核に感染し、毎年約200万人が結核によって死亡すると推計されており、未だ途上国を中心に結核が蔓延しています。国の保健医療システムの崩壊、HIV/エイズ二重感染者の増加、多剤耐性結核菌の発生などにより問題は深刻化しています。
 1993年には、WHOが結核の「緊急事態宣言」を行い、世界が優先的に取り組むべき課題として結核が取り上げられました。その後、結核対策を推進するための方策としてWHOは「DOTS戦略」を提唱。その有効性が証明され、現在、国の結核対策に「DOTS戦略」を導入することが世界の標準となっています。
 また、世界が一丸となって結核制圧に取り組む「Stop TB Partnership」という連携組織がスイスのジュネーブに設立され動いています。
最近の話題から:「ストップ結核パートナーズ・フォーラム」(No.283)「世界の結核対策の現状」(No.278)「世界の結核流行と対策−その陰と光−」(No.250)、ほか

「世界の結核問題にいかに関わるべきか−国際協力の課題と実践−」 
(石川信克著, 日本結核病学会誌「結核」Vol.80 No.2 February 2005, p89-94) 
*著作権は日本結核病学会に帰属します。

統計資料−世界の結核統計

国際会議報告

  
活動内容

結核対策推進のための技術支援
 日本の開発援助(ODA)によって、途上国の結核対策システムの整備・推進を支援するための海外医療協力が行われています。現在進行しているネパール、フィリピン、カンボジア、ザンビア、パキスタン等における結核対策のプロジェクトの他にも個別で、アフガニスタン、ミャンマー等で様々なプログラムが実施されています。結核研究所では、国際協力機構や外務省の要請により、スタッフの現地派遣、運営への技術的助言により、これらのプログラムの企画立案から評価までを一貫して支援しています。現在進行中のプロジェクト地図
 また、途上国の政府やNGOに直接協力して、毎年2ヵ国程度で「移動セミナー」を開催し、結核対策の評価会や対策従事者の研修会等を実施しています。当所の国際研修で培われた結核対策関係者とのネットワークを生かし、現地の実状を汲み取った企画や助言を行っています。

〜活動地域の結核の現状と活動報告〜
 ・パキスタン  ・フィリピンカンボジア


  
研修

 結核研究所では、途上国の結核対策の推進をリードする人材を養成するため、1963年より国際研修を開講しています。現在は各国の結核及びエイズの対策担当者を対象に集団研修4コース(JICA3、エイズ予防財団1)を実施すると共に、個別に研修生を受け入れています。
 研修生の選定、カリキュラムの企画、実施から評価までを一貫して行い、また、講義だけではなく、参加型プログラムやチューター制度を取り入れるなど、より効果的な研修の提供に努めています。
 卒業生は2,015名・97カ国(2007年5月現在)を数え、その多くが母国の結核対策の第一線で活躍してきました。今では、研修対象国のほとんどの結核対策担当官はいずれかのコースの卒業生であると言えるほど強固なネットワークが築かれています。この人材ネットワークの維持・強化を図るため、ニューズレターの発行等によるフォローアップも行っています。
 また、将来的に結核分野で国際協力を行う日本人を養成するための研修を行っています。特に、医師や臨床検査技師を対象として「国際協力専門家養成コース」を開設しています。

国際研修集団コース(4コース)
国際研修卒業生分布図
国際協力専門家養成コース研修生募集
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研究

 開発途上国の結核問題と対策の改善を目的とした研究や、日本と同様の問題を抱えている結核中蔓延国の対策についての比較研究などを行っています。
 研究の多くは国際協力活動における経験や情報を生かして実施され、今後の活動の向上に資することを目的としています。

 「開発途上国におけるDOTS(直接監視下治療法)をモデルとしたプライマリヘルスケア体制確立に関する研究」 
 (主任研究者 須知 雅史)

 「住民主体の健康づくり:熱帯医学の知のモラル
 バングラデシュにおける医療協力20年の経験より」
 
 (石川信克著,日本国際保健医療学会雑誌 第15巻第1号(平成12年10月発行))


  
国際機関との連携

 国際機関との連携を図り、世界的なレベルで結核根絶に取り組んでいます。世界保健機関(WHO)、国際結核肺疾患予防連合(IUATLD)、StopTB Partnership、日米医学協力研究会、Tuberculosis Surveillance and ResearchUnitの主要メンバーとして、スタッフが運営及び調査や研究等の活動に参加しています。
 また、結核研究所は「WHO指定協力センター」に指定されており、サーベイランス、調査、研究、研修、各国の結核対策への技術的助言、抗酸菌レファランスラボラトリーといった活動を通じて、WHO西太平洋地域事務局に協力し、当該地域の結核問題の改善に尽力しています。


  
国際結核情報センター

 結核研究所は、国際結核情報センターを1992年に設置し、世界の結核情報(各国の疫学情報、結核対策の状況等)の収集・分析と提供を行っています。


*関連リンク:国際保健医療に関連する用語は日本国際保健医療学会用語集のページをご利用下さい。