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とんでもない!まだまだ続く長い戦い。油断は禁物です。
明治以来、日本は結核に悩まされ続け、特に若い人がたくさん死に、「国民病」と呼ばれるほどでした。
今、アジアでは結核が大流行しているといわれますが、それすら及びもつかぬほど日本のまんえんぶりはものすごかったものです。
昔、結核は貧乏につきもので、結核にかかっても仕事を休むわけにはいきません。結果的に結核菌をまき散らす人がたくさんいました。いわば、国中で集団感染していたわけです。
それが戦後、抗結核薬、生活の向上、そして国の結核対策の徹底等により、急激に結核を減らすことができました。
それなら、もう結核のことなど放っておいてもいいじゃないか。というと、そうでもないのです。
結核の減り方が、昭和52〜53年ごろからゆるやかになってしまい、特に排菌するほどになって見つかる患者数はほとんど横ばいの状態が続いています。 この状態は当分続くものと学者は見ています。
現在の日本の結核のまんえん状況は、先進諸国の中ではひどいほうで、アメリカと比べると40年以上も遅れているといわれているほどです。
コレラとか赤痢とか、多くの病原体は人から人へと渡り歩いているうちに野生を失うのか、パワーが衰えてしまいましたが、結核菌は昔と変わらない元気印を誇っています。急性伝染病を起こす病原体の力が強ければ、感染した人はみんな死に、とりついた病原体も運命をともにしました。結核は慢性の病気で、結核菌はゆっくりと、大勢の人、人、人とめぐりながら生きてきたため、パワーを落とす必要がなかったのでしょう。
酒があって、喧騒があって、憂鬱があって、そして結核もあるのが大都会。特に、いろいろな背景を持った人たちが暮らす街には結核感染者が多いのです。しかも医療関係者の指示を無視し、途中で治療をやめてしまうなど、頭の痛い問題となっています。
最近、途上国から来た人たちの中から高率に結核が発見されています。もともとアジアには結核が非常に多いのですが、来日して心理的ストレスもたまり、生活にも無理があって発病しやすいのでしょう。問題は不法滞在者で、医師にかからず、せっかく治療を受けても挫折するケースが多いのとのことです。
こうした人たちのために、ボランティアの団体が相談施設を設け、医療を受けやすくしています。結核予防会でも毎週1回、「在日外国人のための結核電話相談」を開いています。
結核は伝染病です。どうすれば減らせるのでしょうか。それは、菌を吐き出すような重症になる前に見つけて治療すること。これが基本です。
結核の多かった時代は、集団検診のレントゲン写真から患者をふるい分けていきました。 結核が少なくなった現在では(低まんえん)、一つ一つのケースをていねいに追求するのが原則です。しかし、医師が届け出を忘れたり、 家族検診がおろそかにされることもあります。これは国民が結核に対して無関心になってきたためで、 高齢者の発病という結核国民病時代の後遺症的現象とあいまって、結核が思うようには減ってくれない原因となっています。しかも、感染性が高く、痰に菌のまじる患者の発生率は横ばいか、増加の傾向すらあります。 つまり重症になってはじめて見つかる率が高いということです。
発病の危険の大きい高齢者と免疫のない若い世代日本では今、結核菌に感染している(既感染)高齢者と、それより若い未感染の世代との二極化が心配されています。感染している人たちがいつの間にか発病して、周囲の「未感染」の人に感染させる、つまり集団感染事件の火元になってしまうことが問題なのです。
昨年は院内感染事件が続きました。医師や看護婦など医療スタッフが感染し、亡くなった若い看護婦さんもありました。 衛生状態がよくなると、病原菌に対する抵抗力が弱くなるといいますが、お医者さんも看護婦さんも結核菌に弱くなったのでしょうか。
そうではありません。昔は、知らないうちに結核菌に感染し免疫のできていた人が多かったからにすぎないのです。国民病時代では、ほとんどの人が自然感染したのです。 現在中年以下の人は反対に、結核菌に出会ったことのない人が大多数です。こういう人が感染すれば、そのうちの幾人かは発病することになるわけです。
では、今結核として登録される患者の半数以上が60歳以上の高齢者なのはどうしてなのでしょう。高齢者なら、免疫ができていて結核に強いはずです。
それは歳をとって免疫力が下がったからです。胸の中で長い間眠っていた結核菌が目をさまし、活動を始めるのです。 年齢(老化)ばかりでなく、糖尿病、透析、手術、心理的ストレス等々、免疫力を弱める要素はたくさんあります。 (しかも超高齢・余病等で免疫低下がさらに進むと、既感染の人でも再感染の恐れが出てきます。最近、老人施設での結核集団感染が報道されました)。
日本では今、結核菌に感染している(既感染)高齢者と、それより若い未感染の世代との二極化が心配されています。
新登録患者数・42,715人(42,472) 罹患率・33.9(33.7)
(人口10万人あたりの新登録患者の率)塗抹陽性罹患率・12.7(11.9)
(痰の中に菌を多量に出している、感染性の高い新登録患者の率で人口10万人あたりの率)要治療患者・55,409(59,760) 有病率・43.9(47.5)
(人口10万人あたりの要治療患者の率)死亡者数・2,736(2,859) 死亡率・2.2(2.3)
(人口10万人あたりの死亡者の率)( )は前年(1996年)の数字
結核についてのなぜ?を家庭での知識として ご活用いただけるよう分かりやすく解説しました。 |
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