★はじめに
佐賀県は九州の北西部に位置し、有田、唐津に代表される陶磁器、弥生時代最大の環濠集落
「吉野ケ里遺跡」など古くからの歴史・文化を誇り、またこれらを育んできた豊かな自然に恵まれた
ところです。
また、平成10年7月28日、佐賀空港が開港いたします。有明海に面し気象条件も最適な空港として
現在東京、名古屋、大阪からの発着が予定されていますので、機会がありましたら是非ご利用ください。
さて、佐賀県の結核は、罹患率、有病率ともに全国でも悪い方から1桁、良くて10位台の状況で
したが、結核予防会青木理事長の「やれば良くなる」との言葉を胸に、特対事業を実施してきました。
平成7年あたりから好転し、平成8年には罹患率、有病率ともに
全国平均を上回るほどの効果をあげることができました(表1)。
表1 結核罹患率、有病率の年次別推移 |
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本稿では特対事業のうち、結核対策モデル事業を中心に述べたいと思います。
なお、このモデル事業は、結核研究所の勧めもあって平成9年度から取り組んでいます。
★モデル事業が始まるまでの経緯
平成7年12月、厚生省からPZAを加えた短期強化療法を含む結核医療の新基準「短期強化療法」が
示され、平成8年4月から実施となりました。これを受け県が実施したことは、
@医師会、指定医療機関へ厚生省通知とパンフレツトを送付
A毎年作成の「佐賀県の結核」に結核医療の新基準を掲載し、指定医療機関へ配布
B医師会主催の医師研修の実施(委託事業)講師 結核予防会青木正和理事長
C結核医療精度研究会の実施(平成7年度鹿島保健所、平成8年度唐津保健所)
講師青木正和、和田雅子(結核研究所)
D広報誌「結核今、再び注目を受けています」の発行、指定医療機関への配布などです。
特に結核医療精度研究会については厚生省通知の前から実施しており、その席で長期事
例では、青木先生から直接「思い切って治療をやめたらどうですか。再発したら短期強化療法を
採用すればよい」等の助言を受けていたこともあり、研究会実施保健所管内の主治医は、
結核医療の新基準「短期強化療法」を割とスムーズに受け入れる素地になっていたのではないかと
考えています。
★佐賀県結核対策モデル事業
平成7年度、平成8年度と実施した特対事業で、果たして短期強化療法が医師の間に浸透しているか
どうか判断しかねていた頃、結核研究所の山下部長から結核対策モデル事業を紹介され、
迷うことなく実施することにしました。
当事業は、平成9年度からの3カ年計画で現在も継続中ですが、狙いは、欧米より数年遅れて
導入された前述の「短期強化療法」をより効果的に、かつ系統立てて全県下に普及しようとする
ものです。その中で、数値目標を結核対策推進計画(平成3年9月公衆衛生審議会答申)が節目の
目標としている「西暦2000年の結核罹患率20.0以下、小児結核根絶」と設定しています。
この事業は先例がないため実施計画を策定するにあたっては、結核研究所からの指導により
実施要綱、医師会等の日程調整及び趣旨説明、本庁出先機関の役割分担等の作業を進
めてきました。
平成9年度は佐賀中部保健所及び鳥栖保健所(県内5保健所1支所体制)で実施。事業内容は
次のとおりです。
@結核診査協議会の公開
結核医療費公費負担申請について公開の診査協議会で検討する。
A症例検討会
長期療養事例、診断の遅れに係る事例、その他判断に苦しむ事例について症例検討を行う。
また、事業を効果的に推進するため、次の
ような環境整備を行いました。
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結核対策モデル事業個別研修会 (中央は結核予防会青木理事長)
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@結核対策モデル事業の実施を県全域に周知するため県医師会、各地区医師会をはじめ指定医療機関へ
通知し、県の「短期強化療法」への取り組み姿勢を明らかにする。
A医師の研修に加え、結核対策モデル事業ではDOTS(直接監視下における短期化学療法)の推進を
目的とした患者管理を主な事業としてとらえ、月1回の服薬状況確認を常態化するため患者管理台帳を
作成する(全保健所で実施)。
B右の事業をより効果的に周知するため、症例集(事業の趣旨・講話等も掲載)を作成し、
指定医療機関へ送付する。
結核対策モデル事業の効果は、まだ県内全域に浸透しているとは言えない状況ですが、
症例検討を中心とした結核医療精度研究会等により効果的、効率的な結核医療が少しずつ主治医の間に
浸透し、結核医療費の公費申請や結核診査協議会の審査に際し、申請の減少や不合格の増加という形で
少なからず影響が出ているのではないかとの声が、保健所からはあがっています(表2)。
表2 結核診査協議会結果 |
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★ツ反・BCG研修会等の実施
この研修会は結核予防会の元秩父宮記念診療所長故徳地清六先生に全面的に協力をいただき、講演形式
で平成7〜8年にかけて全保健
所で実施しました。研修内容はツ反の法的位置付け、保護者への説明と同意のとり方及び判定方法、
予防接種の意義等です。
また、平成7年度は県内の全市町村及び全小中学校の協力を得てツ反応発赤径・硬結径調査を実施し、
集計分析結果に対して徳地先生からBCG接種時の「押しが弱い」からと指摘があり、これを報告書に
まとめ全指定医療機関へ配布しました。
説明会が県内一巡したため、平成9年度は福島県の事業を参考にしながら、杵藤保健所鹿島支所で
実地研修を実施しました。地区医師会、太良町役場及び住民参加者の調整等について鹿島支所では
相当な苦労があったようです。当日のツ反応検査、BCG接種では、徳地先生から数多くのアドバイス
を受け、参加医師も接種の実技に最初は戸惑いもあったようですが、「再確認でき、大変有意義であっ
た」等の感想がありました。研修会の模様はビデオに収録し、全市町村、地区医師会及び保健所に配布
し接種担当医に貸し出しています。なお、この研修会は結核対策モデル事業のBCG接種技術標準化
対策の一環として取り組んでおり、平成10年度は佐賀中部保健所で同様の実地研修を予定しています。
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ツ反・BCG接種実地研修会
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★終わりに
結核対策は、「適切にやれば必ず結果が出る」ものです。逆に、「やらなければ停滞どころか、
すぐに悪くなってしまう」と思います。
佐賀県では、結核対策モデル事業を中心に他の特対事業も
組み入れながら、西暦2000年の数値目標達成に向け取り組んでいるところです。
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