松戸保健所 在宅服薬支援事業
(在宅DOTSモデル事業)






                                   千葉県松戸保健所疾病対策課
                                     主任保健師  山本 裕香



【はじめに】
 千葉県では、平成13年9月に「結核対策千葉方式」を策定し、その中で、「保健所は患者発見から治癒までの患者支援の徹底を実施する」を柱の1つにした。同時に平成14年4月から県内結核病床を有する7病院で院内DOTSを開始した。松戸保健所は次のステップとして在宅結核療養者に対して、確実に服薬が終了できるような支援体制を整えるための取り組みを実施した。

【経過】
 松戸保健所は、千葉県北西部に位置し、管内人口約46万人で郊外都市として発展してきた。平成13年新登録結核患者は116人であり、罹患率24.8(人口10万対)、喀痰塗抹陽性患者の割合は37.1%である。在宅服薬支援事業の経過は、表1のとおりである。患者管理の課題としては、@6割が就労・就学年齢であり、退院後は連絡がつきにくい、A喀痰塗抹陰性患者との唯一の接点は結核予防法申請時であり、治療中断をしても早期に把握できないことであった。平成14年度には在宅療養者に対する服薬状況調査を実施し、平成15年度から以下の事業を開始した。




【平成15年度 在宅服薬支援事業】

 「患者が確実に服薬を終了するための支援強化」「服薬中断を防ぐ体制の整備」を目標に事業を開始した。

@共通のチェック項目を使用した個別服薬診断
 通院患者全員に対して、患者の生活状況を把握し、服薬を阻害する因子としてのチェック項目(表2)を決め、患者と共に問題点を明確にし、患者ごとに服薬管理方針を検討する。




A薬箱・パンフレット等の配布(写真)
保健所で作成した治療目的や薬についての説明を記した「パンフレット」やアンケート回答者からの「メッセージ集」及び「薬箱」を治療開始時に配布する。(*薬箱は入院治療しない患者のみ配布)。メッセージ集には、「いつでも前向きな気持ちで毎日過ごすこと(30代女)」「(抜粋)必ずよくなるので療養する(40代男)」等とあり、配布した患者には「共感した」と好評であった。また、薬箱は薬を1週間分に分け、他者から内服の確認ができやすくするものであり、「目に付きやすく、飲み忘れを防げた」と脱落防止に有効な感想が挙げられた。

                                                                                       
        メッセージ集                        薬箱


B保健所服薬管理カンファレンス
 担当課長及び結核担当保健師がチェック項目により検討カンファレンスを行い、患者ごとに服薬管理方針を決定する。現在までに121人に対して服薬管理方針を決定し、支援中である。

C保健所DOTS
 在宅にて確実な服薬が困難と予測される者・治療中断の恐れがあると思われる患者に対して、本人の同意の下に保健所にてDOTSを実施することとした(服薬場所:所長室)。また、患者によっては、服薬後の空袋や服薬確認手帳を持参する方法も選択肢として挙げられている。現在までに毎日服薬を実施する患者はいないが、毎月来所し、服薬手帳にて確認している患者が1人いる。保健所DOTSの対象であったが、身体的・経済的に来所が不可能な患者に対しては、訪問看護師と連携し、服薬管理を実施中である。

D病院連携
 管内の在宅結核治療の中心となる病院(1ヵ所)と連携し、患者の受診や治療状況の情報交換を毎月実施している。対象者は延べ72人である。

Eコホート会議
 結核診査協議会委員・保健所長・課長・結核担当保健師にて、喀痰塗抹陽性初回治療患者(INH/RFPを含む4または3剤治療)に対して、毎月1回コホート評価を実施している。評価内容は、院内面接実施率・治療開始時の菌検査結果確認・退院後の通院確認・治療終了確認・治療成績である。

【おわりに】
 現在も本事業を展開中であるが、チェック項目の追加や自立した生活ができない単身生活者の服薬問題等、様々な課題が出てきている。事業を実施している中で、在宅DOTSとは直接服薬確認をすることだけでなく、個々の患者に合った服薬支援の展開ではないかと考える。


Updated 04/04/13