大都会の縮図新宿
結核患者の減少を目指して!

新宿区保健所予防課 医療指導主査
沼田久美子

 

   新宿区は人口28.4万人で、日本の代表的なビジネス・歓楽街を有しています。外国人居住者(登録者2万人)や不安定労働者(日雇い、フリーターなど)も多く、公園などにはダンボールやテントで生活をしているホームレスが約千人います。最近、このような集団への結核の偏在化が大きな問題となってきました。
ホームレスが住む新宿区内公園のテント

 新宿区の結核罹患率は平成10年には人口10万対77.8(図1)で、保健所別でも全国第11位と高値です。さらに治療中断率が高く、治療成功率は低い値を示しています(新宿区56.2%、全国80%)。患者の中にホームレスや外国人の占める割合が高いという特徴もあります(図2)
 ホームレスは劣悪な住環境や栄養状態不良にあるため罹患しやすく、種々の理由による受診困難もあります。また、治療が開始されてもアルコール問題等が絡む治療脱落、中断が目立ち、治療完了率を下げる一つの原因になっています(表)。診断の時点で排菌患者の70%がガフキー3号以上と重症を呈し、他者への感染の可能性も危惧されています。
図1 図2

 このようなハイリスク患者の治療成功率を上げるために、新宿区では平成12年度よりホームレス患者を対象としたDOTを計画しています。
 概要は以下のとおりです。@対象者は退院時菌陰性でDOTに同意をした人。A退院後契約簡易宿泊所に入所し生活保護を受け、毎日(休日は除く)保健所DOT室への通所。B抗結核薬は保健所で保管、来所時スタッフ確認のもとの服薬。C休日分薬剤は前日に持ち帰り、各自で服薬、休翌日空袋の持参。D外来受診時は主治医が病型、菌所見、副作用などをノートに記入。E定期的な治療評価ミーティングにて検討、評価。
 以上のような構想を描き、実際には平成12年6月からのスタートを目指し奮闘中です。


Updated 00/08/11