結核予防基本指針を読む

結核研究所長
森 亨


 平成16年10月18日「結核の予防の総合的な推進を図るための基本的な指針」(以下「指針」)が厚生労働省から公布された (本誌p20〜25)。これは改定結核予防法に基づき国が定めるもので,予防法の現場での運用について,国の考え方を述べたものと見ることができる。「基本」とはいうものの,内容はかなり具体的で,その意味で法や政省令の行間を解説したものという性格もあり,そのように十分吟味して頂きたいと思う。また「都道府県結核予防計画」についても,かなり具体的に「留意点」を示している(注)。以下特に注目すべき点をいくつか拾ってみたい。

 予防推進の基本的方向
 保健所が結核対策の技術的拠点として,市町村への技術支援等に役割を発揮すべきである。DOTS実施率を2010年までに95%に,その中で脱落率を5%にし,罹患率を人口10万対18以下とする(最後の目標は,2003年から年々4%強の低下率で実現するので,やや安直な感じもするが)。

 予防のための施策
  精神病院等での健康診断は結核予防法で義務化する等はできないが,必要に応じて設置者に健診の実施を勧めている。住民健診の対象年齢の設定は患者発見率を参考にするが,「参酌」であって絶対的な基準ではなく,地域の年齢階級別罹患率等も合わせて考えることができると解釈すべきであろう(審議会での議論)。同時に地域のハイリスク者への健診について市町村の積極的な対応を求めている。BCG接種については市町村の努力・工夫により6カ月までに90%,12カ月までに95%の接種率の確保を求めている。医療に関して,検査施設に対する外部精度管理体制の構築について説いている。

 研究の推進,人材の養成
 結核発生動向調査の充実・質的向上,及び医療・予防に従事する人的資源の確保及び資質向上における国や都道府県の責任を記述している。
 なお,都道府県結核予防計画は,感染症予防計画と「一体のものとすることが適当である」と書かれているが,これは感染症と結核の章立てを分けて策定し,「感染症・結核予防計画」とすることを否定するものでない(審議会での確認)。 


注:これについては2つの厚生労働科学研究班(主任研究者:結核研究所森 亨,及び同石川信克)が「都道府県結核予防計画策定の手引き」を研究班報告として作成し,結核研究所ホームページwww.jata.or.jpに掲載したので参考にして頂きたい。

updated 04/12/22