日本版“Stop TB”に力を結集しよう!


ストップ結核パートナーシップの Ms. Petra Heitkampを迎えて

へイトカンプ氏

7月29日/結核予防会会議室

 2004年7月29日,結核研究所の国際研修講師として来日中であった,ストップ結核パートナーシップ事務局主任のヘイトカンプ氏(Ms.Petra I. Heitkamp)を迎え,世界におけるストップ結核運動の現状と日本の貢献のあり方について討論会を行った。厚生労働省(大臣官房国際課及び国立国際医療センター),国際協力機構(JICA)及び結核予防会から,日本側のパートナーとして,日本の結核対策国際協力分野の中心となるメンバーが一同に会した。
 会議では,ヘイトカンプ氏が,WHOで作成したフィルム(日本語版)を上映。結核に対する誤った理解を表す様々な国の人々のコメントを顔写真入りで流し,実際の深刻な結核事情と対比させ,いかに人々が結核に無関心であるかを示し,DOTSにより多くの人が治癒していることをアピールする内容であった。
 その後,ヘイトカンプ氏から世界の結核対策の動きについての報告があった。世界では,2005年までに「推定患者の70%を発見し,その85%を治癒する」という目標が掲げられている。しかし,治癒率は82%と目標に近づいているものの,発見率は37%と目標にはかなり遠い状況である。一方,ストップ結核パートナーシップが1998年に設立されてから,その「世界抗結核薬基金(GDF)」を通じ,良質で低価格の抗結核薬がDOTS患者に配布されるようになった。またこれと並行してDOTS拡大運動,結核HIV重感染対策,多剤耐性結核対策への戦略も次々に生み出されている。このなかで,150カ国以上が2005年の世界目標を達成するために国家計画を作成し,実行している。さらに,新たな診断法,抗結核薬,ワクチンの開発にも世界的な取り組みがなされている。また近年では,ISAC(Intensified Support & Action Country)イニシアティブという戦略により,外部資金援助は得られても,対策実施能力が乏しく進展の遅れている結核高負担国に対し,技術支援を強化するよう計画が開始された。公的・私的機関が連携してDOTSを実施していくための動きも活発になった。
 その後の討議では,近年の厳しい経済状況を受けわが国においては結核対策の予算が大幅に削減されていることや,一方でパキスタン・バングラデシュのように予算はあるが人材が不足している国の存在,また,厚生労働省・外務省・財務省などの関連省庁間及び公的・私的機関の連携の難しさについて意見が出された。これらの問題に対しては,ニューヨークにおける資金造成のためのワーキンググループや,ヘイトカンプ氏からはカナダにおける“Stop TB Canada”といった様々な機関を巻き込んだ組織など,参考となる事例が紹介された。また,結核対策の重要性をメディア等を通じて政府に訴えていく「アドボカシー」を強化すべきということで意見が一致した。
 今回の討論会は,アドボカシーの一環としてマスコミに取材を呼びかけ,開始前にはプレスミーティングを行った。世界のストップ結核運動の盛り上がりとは逆行して,わが国で結核対策の予算が削減され続けている憂慮すべき現状を打破するために,関係者の力を結集し,このようなアドボカシーを積極的に行うことが,ますます重要となっている。

文責 編集部
*文中にあるWHO作成のフィルム(CD-ROM )を貸し出し致します。お問い合わせは結核予防会
普及課(TEL03-3292-9288)まで。
会議の様子

updated 04/09/29