乳幼児BCG接種の技術評価





鳥取県福祉保健部健康対策課
予防係長  土井 博文

本事業実施に至った経緯

 全国的に平成11年は、平成9年、10年に引き続き結核新規登録患者数、罹患率ともに前年度に比較して増加した。そしてこの年、国は結核緊急事態宣言を出し、結核の正しい理解と予防を呼びかけた。
 本県においても平成10年、11年と新規登録患者数が増加していることなどから、結核の現状を把握することにより、結核対策の効果的・合理的な改善を進め、もって結核の二次感染を最低限に抑え、長期的な結核の罹患率の減少を図るため、結核対策強化モデル事業の1つとして本事業を実施した。

概要

1.目的
 市町村長が行う乳幼児期に対するBCG接種の実態を把握して、その接種率及び接種技術を向上させるための体制を確立する基礎資料を得ることを目的とした。
2.調査方法
 @対象
   全市町村(39市町村)
 A調査実施方法
   平成13年4月1日から同年11月末までに市町村で行われる3歳児健康診査において、受診者の任意の協力により各受診者に対してBCG接種の既往、それによる副反応の既往について問診等を行い、さらに接種局所の観察を行った。
 B主な調査項目
   性別、生年月日、BCG接種の既往、接種時期、接種機関、接種後の異常反応、現在の局所の状況(針痕数、強い反応)、未接種の場合はその理由。
 C調査実施体制
   保健所は管内の市町村に対して調査への協力を依頼し、調査結果をとりまとめ、健康対策課へ送付した。
 D集計・解析
   調査結果の集計後、鳥取県結核対策推進協議会において結果の評価を行った。

調査結果

1.調査実施状況
 県内37市町村(西伯町、淀江町除く)より、1,253名の調査票が回収された。そのうちBCG既接種の1,245名に対して接種技術評価調査の分析を、未接種の8名については未接種理由の検討を行った。表1
2.月齢別BCG接種実施状況(表1)
 接種時月齢は、3歳児健診受診者で8.4±4.6であった。全体では月齢7〜9ヵ月に1,245名中514名(41.3%)がBCG接種を受けていた。しかし、地区別に見ると接種時の月齢に差があり(平均月齢で5.3〜15.0ヵ月)、遅い時期に集中的に接種されるところと4歳未満の時期に分散して接種されるところがあった。
3.BCG接種実施方法
 接種機関は、集団1,212名(97.3%)、個別33名(2.7%)、その他はなしで集団が多かった。地区別に見ると、集団接種が主な36地区と個別接種が主な1地区に分かれた。
4.BCG接種率
 調査票から推定されるBCG接種率は全体で99.4%、どの地区でも90%以上で明らかなばらつきは見られなかった。
5.BCG針痕数(表2)
 針痕数は、男11.5±6.1、女11.0±6.1と性差は見られなかった。地区別の針痕数にはかなりのばらつきが見られ、最大がA地区の13.9±5.3、最小がT地区の1.7±2.4であった。このばらつきを、接種月齢、接種から調査日までの接種後期間(以下、接種後期間)で調整してみる必要がある。
 例えば、針痕数が1番多いA地区は、接種月齢が1番早く、接種後期間は2番目に長かった。針痕数がかなり多い(2番目の)X地区の接種月齢は23番目と比較的遅かった。また、針痕数が1番少ないT地区は、接種月齢が13番目であり、接種後期間が24番目に短かった。このように接種月齢が早く、接種後期間が短いほど針痕数が多いとは言えず、針痕数のばらつきが地域による技術水準の違いによる可能性も否定できなかった。

6.接種後反応
 接種後の異常反応(以下、異常反応)は、3ヵ月以上局所が乾かなかった13名(1.0%)、接種側腋窩リンパ節が腫れた1名(0.1%)、その他7名(0.6%)で、総数21名(1.7%)であった。その他の異常反応は、局所の腫脹4名、局所の化膿3名であった。明らかな性差は見られなかった。地区別の異常反応の総数は、A地区で19名(7.1%)、E地区1名(3.0%)、R地区1名(3.7%)と地区による偏りが見られたが、針痕数が多い地区に偏っているわけではなかった。異常反応は接種月齢別に見ると4〜6ヵ月の15名が最多で、接種後期間別では、25〜36ヵ月後の15名が最多だった。ただし、その時期には対象人数が多い。接種機関別に見ると、集団20名(1.6%)、個別1名(3.1%)であった。異常反応に対する手当は局所放置1名、受診・観察のみ4名、放置16名で、ほとんどが処置をしていなかった。
 調査時点での局所の強い反応はその他1名(0.2%)であった。その他の強い反応は痂皮(かひ)形成1名であった。
7.未接種の理由
 「当日体調が悪くて延期され、そのままになった」2名、「ツベルクリン反応が陽性だった」2名、「知っていたが都合が悪かった」1名、未記入2名であった。

今後の予定

 現在、6ヵ月までの乳幼児へのBCG直接接種の導入の検討が進められていることから、平成15年度は市町村で実施される1歳6ヵ月児健診受診者を対象として同様な調査を実施することとしている。
 なお、本調査の結果を受けて、BCG早期接種の勧奨及び接種技術向上への助言・指導を図りたい。


Updated03/10/31