平成15年度結核対策特別促進事業の方向について





前厚生労働省健康局結核感染症課
予防接種専門官  野原 勝

結核対策特別促進事業の目的

 結核対策特別促進事業は、結核予防法による定期の健康診断及び予防接種の着実な実施を図りつつ、既存の補助制度等がない事業であって、地域住民の自主的な協力と地域の実情に応じた重点的な結核対策事業の実施により、効率的・効果的な結核予防対策の推進に資することを目的にしています。具体的には、結核の罹患率の高い地域等、特に重点的な対策を必要とする地域において、地域の事情に即した結核対策への取り組みを行う都道府県・政令市等に対する補助事業です。
 全国一律的な措置である結核予防法が結核対策の一階部分であるとすると、それぞれの地域特性に配慮した、きめ細かな対策を行う二階部分とも言え、近年の結核罹患の特徴である、地域格差、高齢者の罹患の増加、薬剤耐性菌の出現などの問題に対応した事業と言えます。本稿では平成15年度の結核対策特別促進事業のメニューや合理化の主旨と方針について要点を紹介します。

平成15年度の見直しについて

 国が拠出する補助金については、平成10年5月に閣議決定された地方分権推進計画等により、国の負担が特に必要なものに限定する観点から、合理化を推進することとなっていること、また、昭和61年度の事業開始から相当年度期間が経過していることから、平成15年度予算執行方針については、その内容について見直しが図られています。
 具体的には、結核対策特別促進事業のなかで、補助率の高い特別対策事業のうち、研修事業等については定着してきたと考えられることから、一般対策事業に振り分けられることになりました。また、平成14年3月の厚生科学審議会結核部会報告「結核対策の包括的見直しに関する提言」の内容を踏まえ、結核対策を一律的、集団的対応から、最新の知見やリスク評価に応じたきめ細かな対応へ向けて整理・合理化を行っています。

大都市における結核の治療率向上(DOTS)事業の推進

 DOTS(直接服薬確認療法)戦略は、結核治療成功率の向上や薬剤耐性結核対策のための有効な手段であり、結核対策特別促進事業の中でも「大都市における結核の治療率向上(DOTS)事業」として取り上げられていますが、その活用については一部の自治体に限られており、普及しているとは言えない状況です。
 そこで、厚生労働省では平成15年2月に、DOTS戦略を全国的に推進し、大都市に限らず地域の実情に応じて弾力的に運用できるように図るため、「日本版21世紀型DOTS戦略推進体系図」を作成し、いくつかの服薬支援体制のモデルを提示しました。厚生労働省としては、政令市及び特別区に限らず広く都道府県を対象に、本体系図を参考として本事業への積極的な取り組みをお願いしているところです。


Updated03/08/14