2003年3月24日世界結核デーキャンペーンのスローガンが決定!
テーマ及び標語が意味するもの 2003年の世界結核デーのテーマは「結核患者」です。患者は、DOTSを通して結核が治る病気であるということの『生き証人』です。さらに、患者の個々の経験話には様々なドラマがあり、そこには国民及び医療関係者が学ぶべきことが多くあるはずです。こうして、結核の治った元患者が世界結核デーを通してDOTSのサポーターとなり、社会に自ら結核の早期発見と治療の完全実施及び結核対策の重要性を訴え、結核に対する差別や偏見を社会からなくすことが求められています。 世界の今年のキャンペーンの目的 1.結核の症状や治療について一般国民に周知する。 2.結核の症状が出たら検査を受けるよう人々に促す。 3.DOTS治療を最後まで受けるように患者を説得し、支援する。 (World TB Day 2003 Campaign Rational, WHO資料より) WHOによると、2003年3月までに1000万人目の結核患者がDOTSで治療されることになります。上記ロゴの10−10は、世界結核非常事態宣言を行ってから10年目、10百万人(1000万人)目の患者のDOTS治療を意味しています。 |
はじめに
1882年3月24日、ロベルト・コッホは結核菌の発見を学会に発表しました。WHO(世界保健機関)はそれから100年たった20世紀にもまだ結核を根絶できていないという状況を打破するため、97年の世界保健総会で、この日を正式に「世界結核デー」制定しました。WHOが掲げる2003年世界結核デーのテーマは「結核患者」で、世界中でキャンペーンが行われます。世界で毎年200万人が結核により死亡している中で、結核患者は結核制圧のために最も対費用効果が高いDOTS(ドッツ)という結核対策戦略で結核が治るということを証明してくれます。
世界の結核の現状
DOTS普及が遅れる高負担国
世界では、有効な治療方法が確立してから50年たった現在でも毎日約25,000人が結核を発病し、5,000人が死亡しています。結核は貧困層や弱者を襲い、また最も生産性の高い15〜54歳の人を直撃するため、貧困問題の解消を妨げる原因となっています。世界の全結核推定患者数の80%が22カ国で占められています。これらの国の多くでは、政府の関与の欠如により結核制圧のために最も対費用効果が高いDOTSの普及が遅れており、患者のたった5人に1人がDOTSで治療されているにすぎません。このため、DOTS戦略の拡大を加速し、人材育成を強化することが重要課題となっています。
一方、エイズの流行により2200万人の命が奪われ、1300万人がエイズ孤児になり社会問題を引き起こしています。HIV感染者及びエイズ患者は2002年末で4200万人にのぼり、その7割を世界の人口の10%であるサハラ砂漠以南のアフリカが占めています。結核HIV重複感染者の内68%がサハラ砂漠以南のアフリカにおり、22%が東南アジアにいると予測されています。(2001)。HIV感染者の3人に少なくとも1人は結核を発症するため危機は増大しています。
このような事態を打破するために設立されたエイズ・結核・マラリア対策世界基金(GFATM)においては、第1ラウンドの6億1千6百ドルに続いて、第2ラウンドでは、8億6千6百万ドルの供与が決まり、新たな資源の有効な使い方に世界の注目が集まっています。
ストップ結核世界プラン目標達成に向けて
いまや200もの各国政府、民間の団体などで成り立つストップ結核パートナーシップは、98年に発足してから、2000年の世界結核対策閣僚会議での結核への政治的関与を具体的に世界に向けて表明したアムステルダム宣言や、2001年のワシントンでの第1回パートナーシップ・フォーラムを経て、ストップ結核世界プランを発表しました。WHOをはじめ世界は、2005年までに患者の70%を発見し、その85%を治療し、2010年までに死亡率、有病率を2000年時の半分まで減らすという目標達成に向けて、前進しています。
並行して、ストップ結核パートナーシップ事務局が事務局を兼ねる世界抗結核機構(GDF)は、DOTSを実践し1人あたりGNPがUS3000ドル以下の国を対象に、良質の抗結核薬を無償で供与しています。GDFが2001年の世界結核デーに設立されてから、すでに37の申請書が審査に合格し、そのうち16の国が抗結核薬を受け取りました。GDFは2005年までに1,000万人の患者に抗結核薬を供給し、2010年までに450万人を治療することを目標にしています。
〜ストップ結核世界プランの目標〜
おわりに
世界ではこのようにストップ結核世界プランの目標達成に向けた様々な動きがありますが、世界結核デーの機会にアドボカシーを進め、さらにこの動きを活発にしていくことが期待されています。
結核が治って生活が変わるのは患者(中央)だけではない。患者の服薬パートナーとして患者を治癒することで、自らの人生も変わった保健ボランティア(右) |