日本で治療を始めた外国生まれ結核患者さんの14人に1人が治療途中で帰国しています。
BRIDGE TB CARE(以下BTBC)は結核研究所が諸外国の結核対策関係機関と提携して提供する結核医療国際連携支援サービスです。具体的には日本で結核治療を開始するも海外で治療を続けることを決めた患者さんの治療とケアが途切れないよう、日本と、患者さんの渡航先の関係機関との連絡調整を行い、日本を出国した患者さんが最後まで治療を完了できるよう支援をし、また最終的な治療成績を確認します。
BTBCは試行的研究(科学研究費助成事業基盤(C)2022年)*として開始しました。
*「国境を越えて移動する結核患者の医療継続支援制度構築とその有用性の評価」(代表研究者:大角晃弘)「19K10635」(2023年度終了予定)
日本における外国出生患者さんの数は年々増加傾向にあることは、結核対策に携わる多くの方がご存知のことかと思います。2021年に新登録となった外国生まれ結核患者さんの数は1,313人、そして全体の結核患者さんにおける外国生まれの割合は11.4%で、20-29歳においては72.6%に達しました 1)。
また外国出生患者さんの結核の治療成績において「転出」が非常に多いことも多くの方が現場で実感されていることでしょう。実際に結核登録者情報システムのデータを見てみると、2020年に登録された外国生まれ結核患者さんの治療成績において「転出」の割合は10.2%(145/1,418)で、日本生まれの約8倍となっています。先行研究から日本生まれの患者さんが転出した場合、その約7割は国内で治療を終えていることがわかっていますが、外国生まれの患者さんの場合は約半数が帰国しており、治療成績はわかっていません。これを「治療中断」と解釈すると、外国生まれ結核患者さんの治療中断率は約12%という数字になってしまいます 2)。
2021年には新登録外国出生結核患者さんのうち、治療成績が転出だった145人中、99人(68.3%)が国外転出でした。
結核の治療途中で国境を越えて移動する結核患者さんにとって、結核の治療を続けることは必ずしも最優先されることではありません。多くの先行研究が「国境を越える移動」は結核の治療中断のリスク要因であることを示しています 3)。そして結核の治療を中断することは、患者さん自身の健康を著しく損なう恐れがあるほか、周囲の人々への感染拡大、そして世界的な脅威となっている多剤耐性結核を作り出す可能性があります。その新たな結核の感染と発病は、結核対策に関わる私たちが「もう私たちには関係ないことである」ということにはできません。
「日本で結核の治療を開始した患者さんは、最後まで責任を持ちたい。結核の治療の途中で国境を移動する患者さんと世界中の結核医療を繋ぐ『架け橋』を提供したい。」その思いから、私たちはBTBCを立ち上げました。
BTBCの支援の流れを簡単にご説明します。
※申請は保健所から受け付けています。医療機関・管理団体の方は管轄の保健所経由でお問い合わせください。
また、BTBCを利用される患者さんに対して、アンケート調査と面接調査へのご協力をお願いしています。これは、患者さんがどのような状況で帰国することを選んだのか、また、どのような支援を必要としているかについて、患者さんの目線で知ることを目的としています。ご協力はあくまで任意で、アンケート調査・面接調査の参加をしなくてもBTBCの支援を受けることができます。詳しくは同意書内の「説明資料」をご覧ください。
参考文献
1) 結核の統計2022, 公益財団法人結核予防会
2) 河津里沙, 大角晃弘, 内村和広, 泉清彦.
肺結核患者の治療成績における「転出」の検討 - 国外転出の検討も含めて -, Kekkaku Vol.93, No.9:495-501, 2018
3) Dara M, Sulis G, Centis R, D’Ambrosio L, de Vries G, Douglas P, Garcia D, Jansen N, Zuroweste E, Migloiro G. Cross-border collaboration for improved tuberculosis prevention and care: policies, tools and experiences. Int J Tuberc Lung Dis. 2017;21:727–736.
以下の必要書類を「申請書類ダウンロード」から入手し,必要事項をご記入ください.申請書類をひとつのフォルダにまとめた上で,圧縮ファイル形式(zipファイル形式)で「申請はこちらから」よりアップロードしてください(圧縮ファイルの作成方法はこちら)。
紹介状は電子媒体で現地の関係者に転送され,フォローアップのために情報が更新されます。PDFやFaxなどの紙媒体を避け,必ず拡張子を「.xlsx」としたExcelファイルで提出してください。
同意書の内容を確認の上、患者さんが直筆で署名した同意書を,スキャナやスマートフォンなどで画像として取り込んだ電子ファイル(PDFやPNGなど)として提出してください。
*なお,国によって同意書の様式が異なりますのでご留意ください。
ミャンマー・ベトナム・フィリピン・中国・韓国の5カ国に出国される方が対象です。アンケートにご協力いただいた場合は,上記に加えてアンケートをスキャナやスマートフォンなどで画像として取り込んだ電子ファイル(PDFやPNGなど)として提出してください。
ミャンマー・ベトナム・フィリピン・中国・韓国・ネパール・インドネシアの7カ国については専用の書式がありますが,それ以外の国については英語版の書式で申請してください。申請書類の記入は,主治医でも保健所でも構いませんが,申請にあたっては,可能な限り保健所よりお問い合わせいただくようご理解の上,BTBCをご利用くださるようお願い申し上げます。
圧縮ファイル(zipファイル)の作成方法(Windows)
1. フォルダを準備し申請書類のファイルをフォルダ内に保存します。
2. フォルダを選択した状態で,右クリックするとメニューが出てきます。
[送る(N)] » [圧縮(zip形式)フォルダー] をクリックします。
3. しばらく待つとzip形式ファイルが生成されます。
1. BTBC対象外の方:
・活動性結核と診断されていない方
・潜在性結核感染症(LTBI)と診断されてそのための治療を開始、または予定している方。
・すでに結核治療を終了している方(管理健診中の方)
・すでに帰国している方。
・帰国時点で残りの結核治療期間が1か月以内である方。
・短期間(1か月程度)の一時帰国をする方。
2. 紹介手続きについての補足
・BTBCへのご連絡は早めにお願いします。患者さんが帰国する可能性が確認できた時点で、先ずはご相談ください。その後、予定が変更となりBTBCの利用が不要となっても構いません。
・BTBCは帰国先医療機関の案内も含めた患者支援制度ですが、医療機関間の患者紹介手続きを代行するものではありません。
・BTBCを利用される際でも、国内での患者紹介の手続きと同様に「診療情報提供書」(英文、サンプルをご用意しております)、「検査結果」、「画像データ」等は患者さんご本人にお渡しください。
・その際、「診療情報提供書」はBTBCに提出して頂く必要はありませんが、合併症や副作用など、結核治療について必要な情報は全てBTBC紹介状にも記載されていることをご確認ください。
・患者さんが帰国された後も、ご本人や受診先の医療機関から結核治療に関する問い合わせ等をBTBCが受けることがあります。その際には、BTBCから保健所の担当の方へご連絡いたしますので、必ずご対応をお願いします。
・患者さんが帰国後に日本に再入国する予定がある場合は必ずご連絡ください。
・患者さんの検査結果等、診療情報に関する内容はメールもしくはデータでご提出ください。(お電話でのご連絡はお控えください)
・後日、結核菌薬剤感受性検査結果が判明次第、お知らせください。
上記の留意事項をご確認・ご了承頂いたうえでBTBCへご申請ください。
<帰国時チェックリスト>
以下の文書・情報を帰国前に患者さんにお渡ししたか、ご確認ください。
□ BTBC患者紹介フォーム
□ 診療情報提供書(英文)
□ 検査データ一式(レントゲンのCD-R等)
3.新型コロナウイルス感染症拡大の影響について
2020年以降の新型コロナウイルス感染症拡大に関連し、患者さんのご帰国に際して、下記の件につき、ご考慮をお願いいたします。
・帰国先の国において、新型コロナウイルス感染症拡大防止策として、入国者を対象とする入国後隔離や、国内における厳格な社会的隔離措置等(外出自粛、移動制限等)により、帰国後すぐには紹介先医療機関を受診できないことがあります。
・帰国時の隔離期間は2週間以上の長期間にわたる場合があります。(国によっては4週間の隔離期間をとっているところもあります。2021年時点)
・そのため、患者さんの結核治療の継続・完了を目指すために、こうした社会状況も含めて、患者さんにとって最適な療養環境をご検討いただき、結核治療中に母国等へ帰国する際は、帰国の時期を慎重にご検討くださるよう、よろしくお願いします。
ご質問や申請は、原則メールまたはお問い合わせ/申請よりお願いします。
(公財)結核予防会結核研究所 臨床・疫学部
〒204-8533 東京都清瀬市松山3-1-24
FAX: 042-493-5340
Email: bridgetb@jata.or.jp