第4回アジア・太平洋地域エイズ国際会議 10月25日〜29日/マニラ(フィリピン) |
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1997年10月25日から29日まで、マニラ国際会議場にて行われた第4回アジア太平洋地域エイズ国際会議に、結核研究所から小松先生とともに参加しました。今回のテーマは「Partnerships Across Borders Against HIV/AIDS(エイズ対策に分野や国境を越えて協力を)」。HIV感染者やNGOの参加が以前にも増して盛んで、ジャーナリスト、保健医療従事者、政治家等の参加もあり、分野の壁を越えた協力関係が模索されました。また、主催国のフィリピンのみならず、タイ、インド、マレーシア、中国など多くのアジア地域からの積極的な参加があったのは喜ばしいことでした。
まず、結核に関係した研究発表では、タイのチュラロンコン大学が実施しているHIV陽性者に対する無作為化学臨床試験の経過報告が興味深いものでした。これは、ツ反陽性者に対してはINH単独およびINH+RFP、ツ反陰性者に対してはINH単独及びプラセボと、それぞれ2群に分けて観察されているものです。最終的な報告を待ち、今後のHIV感染者における結核予防の問題を考察したいところです。残念ながら、他には新鮮で、注意を引く発表はありませんでした。
前回チェンマイでの第3回会議の際は、結核研究所が直接組織委員会と連絡をとって、森先生、石川先生が座長を務め、非常に興味深いセッションがいくつも持たれました。今後はエイズ会議における結核分野の発表の質を上げるために、第3回のような協力が必要と思われます。
今回の会議のトピックスはワクチンでした。予防プログラムや治療薬に関しての研究開発が一つの山を越えたためと思われます。現在50種類以上のエイズ・ワクチンが検査室レベルで開発されてはいますが、臨床試験が進まず、その活用への道が開かれていないという現状に対して論議が多くされました。日本でもエイズ・ワクチンが研究開発されていますが、これはBCGをベースにしています。厚生省関係者によると「エイズとともに結核をも予防する可能性を考えたい」とのことでした。エイズと結核との重複感染による問題の深刻度を考えますと、結核専門家としても興味はつきません。
また、エイズ予防財団と結核研究所が共同で1994年度から毎年実施しているアジア地域エイズ専門家研修のフォローアップと評価について、小松先生がポスター発表しました。エイズ対策を主体とした国際コースは少ないため、会議中にも将来の応募を希望する人達が見られました。非常に嬉しかったのは、コース卒業生が数多く参加していたことです。エイズ予防財団の山形先生主催の昼食会で、本年度の参加者を含む20数名と非常に楽しいひとときを過ごすことができました。
次回は2年後で、開催国はマレーシア(マハティール首相の娘さんがエイズ活動家。有能で非常に人気がある)。多勢の参加が期待されます。
最後になりましたが、今回の会議参加を支援くださいましたエイズ予防財団に深謝いたします。
野内 英樹