2005年度結核研究所 分子疫学研究プロジェクト


 本プロジェクトは2005年に新たに設立されたもので、現在プロジェクト機能の構築途上である。今年度のプロジェクト上位目標を「結核菌のDNA指紋法を用いて、結核菌伝播状況に関する疫学的解明を行い、もって国内外における結核対策活動の改善に寄与すること」として、研究活動を行っている。

2005年度プロジェクトの目標としては、(1)現在までに収集された結核菌DNA指紋型(IS6110-制限断片長多型(RFLP)法、スポリゴタイピング法、反復配列多型(VNTR)法)及びそれに関する情報を整理して同情報の共有がなされ、(2)結核菌入手後可及的速やかに結核菌DNA指紋型情報を依頼元に連絡することが出来るようにし、(3)IS6110-RFLP法、スポリゴタイピング法及びVNTR法を組み合わせた結核菌DNA指紋法に関する標準的方法に関する提言を行い、(4)沖縄県における結核菌DNA指紋法を用いた結核対策改善プロジェクトのまとめを行い、(5)沖縄県から収集された菌株に関する薬剤感受性試験を実施して同地域における結核菌の薬剤感受性の年次経過を調査すると共に、結核菌DNA指紋法によるクラスター形成との関連を記述し、(6)新宿区、川崎市、その他における結核菌DNA指紋法を用いた結核菌伝播に関する調査のまとめを行い(7)結核菌感染疫学モデルに関するまとめを行うこと等とする。

2005年度プロジェクトで期待される成果として、(1)収集された結核菌DNA指紋型(IS6110-RFLP法、スポリゴタイピング法、VNTR法)及びそれに関するデータベースが構築されること。(2)結核菌入手から1ヶ月以内に結核菌DNA指紋型情報を依頼元に還元する体制が構築されること。(3)IS6110-RFLP法、スポリゴタイピング法及びVNTR法を組み合わせた結核菌DNA指紋法に関する標準的方法について提言がなされること。(4)沖縄県における結核菌DNA指紋法を用いた結核対策改善プロジェクト、新宿区、川崎市、その他における結核菌DNA指紋法を用いた結核菌伝播に関する調査、及び結核菌感染疫学モデルに関するまとめが成されること。(5)沖縄県から収集された菌株に関する薬剤感受性試験を実施して、同地域における結核菌の薬剤感受性の年次経過を調査すると共に、結核菌DNA指紋法によるクラスター形成との関連を調査すること等を考えている。

2005年度のプロジェクト構成員は、大角晃弘(プロジェクトリーダー、研究部主任研究員)
前田伸司(抗酸菌レファレンスセンター結核菌情報科長)、村瀬良朗(抗酸菌レファレンスセンター結核菌情報科)、内村和広(研究部研究員)及び山田紀男(国際協力部企画調査科長)である。


分子疫学研究分野における主な発表文献:

1) Itoh, S., Kazumi, Y., Abe, C., Takahashi, M. Heterogeneity of RNA polymerase gene (rpoB) sequence of Mycobacterium gordonae clinical isolates identified with a DNA Probe Kit and by conventional methods. J Clin Microbiol 2002; 41:1656-1663.
2) 高橋光良. 結核分子疫学の成果と展望. 結核 2002; 77:741-752.
3) 沖縄県結核サーベイランス検討委員会. 沖縄県の結核患者管理における結核菌遺伝子型同定の有用性. 日本公衛誌 2003;50:339-348.
4) 高橋光良. 結核菌DNAのRFLP分析を用いた結核分子疫学の研究と実践. 結核2003;10:641-651.
5) 伊藤邦彦、高橋光良、吉山崇他. 重感染による多剤耐性肺結核. 結核 2004;79:387-390.
6) Hirano, K., Aono, A., Takahashi, M., et al. Mutations including IS6110 insertion in the gene encoding the MPB64 protein of Capilia TB-negative Mycobacterium tuberculosis isolates. J Clin Microbiol 2004;42:390-2.
7) 高橋光良. 結核とM.avium 感染症の分子疫学の新たな展開. 呼吸器疾患・結核 資料と展望. 2005; 51:57-70
8) 森亨. 地域分子疫学の結核対策への応用. 呼吸器疾患・結核 資料と展望. 2005; 51:45-57
9) 大角晃弘、高橋光良、内村和広他. 結核菌DNA指紋法を用いた結核対策改善事業成績 (1996年4月 - 2004年5月の概略). 呼吸器疾患・結核 資料と展望. 2005; 51:77-83
10) 内村和広. オランダ国の結核菌情報システムについて. 呼吸器疾患・結核 資料と展望. 2005; 51:71-77



updated 06/10/24