結核の原因はなんですか?
結核は結核菌によって起きるのです
結核菌は結核患者の出す咳やくしゃみの飛沫にのり、別の人の肺に吸い込まれることによって感染します(動物園で人から結核をうつされたサルやシカもいます)。
結核菌が肺胞に入ると、まもなく生体の防衛システム(免疫)が働いて結核菌をとり囲み、小さな「核」を作ります。それで「結核」という名がついたのです。大昔は「労咳(ろうがい)」と呼ばれ、明治になってから「結核」が正式名称となりました。ただ、つい50〜60年前までは「肺病」という通称が使われていました。結核の標的は肺だけですか?
結核は肺ばかりではなく全身を冒します
結核菌が冒すのは肺ばかりではありません。胸膜、咽頭、腸、腎臓、骨、皮膚等々、ほとんどの部分を侵略します(肺結核のほかは肺外結核と呼ばれています)。発病しない人もいると聞きましたが?
うつっても、発病しないケースが多いことは確かです
結核菌は防衛システムに包囲されても死滅するわけではなく、どんどん増えて肺を食い荒らすようになります。しかし、大部分の人では、菌は封じ込められたまま、その人と一生をともにします。こういう人は、もう別の人の結核菌を吸い込んでも、防衛システムが警戒しているのでうつることはありません。重症の患者(家族など)の世話をしても平気なのはそのためです。なにしろ、自分の身体に生きている菌を飼っているのですから。
結核菌を吸い込んで、運悪く「結核」になるのは、そのときの体調、栄養状態も関係しているようです。結核はどのように進行するのでしょうか?
結核の進行は比較的ゆっくりですが、抵抗力のない人は要注意
結核菌が生体の初期防衛力にうち勝つと、増殖を始めます。さらに進むと肺に空洞ができます。空洞の中で菌はどんどん繁殖し、咳や痰の中にまじって空気中に吐き出されるようになります。こうなると他人にうつす危険性も大きくなるのです。ふつう、結核は比較的ゆっくりと進行しますが、抵抗力のない乳幼児が多量の結核菌を吸い込むと、あっという間に重症化することがあるので特に注意しなくてはなりません。感染を知るための方法は?
ツベルクリン反応で感染が分かります
結核菌に感染した人やBCG接種を受けた人の皮内にツベルクリン液を注入すると、皮膚が赤く反応します。ツベルクリン液は結核菌の成分で、ツベルクリン反応は結核菌に対する人体のアレルギー反応を利用して結核菌感染の有無を知ろうというものです。強く感染すれば、発赤も大きく、硬くなります。ただし、BCG接種によっても同じように反応がでるので、ツベルクリン反応が結核感染によるものか、BCG接種によるものか、区別はなかなか容易ではありません。BCGとはなんでしょう?
BCGは結核の重症化を防ぐためのワクチンです
BCGは毒性を弱くした生きた牛型結核菌です。
BCGは肺結核の50%を防ぎます。また、特に重得な結核症である髄膜炎や粟粒結核を80%以上防ぎます。乳幼児が結核に感染するとこうした重症な結核になることが多いので、生後できるだけ早い時期のBCG接種が望まれます。赤ちゃんの診断は、経験のあるお医者さんでも難しいのです。結核治療は長引くと聞きましたが?
結核の治療は抗結核薬で短期間に行います
戦後しばらくの間、結核は治療の困難な病気でした。安静にして栄養をとり、きれいな空気の中にいるしか方法がなく、長患いの末、死んでしまう人がほとんどだったのです。
今は3〜4種の抗結核薬で短期間(6〜9ヶ月)に治します。しかし放っておいて重症になれば、やはり治療は困難となり、体力のある若い人でも死ぬことがあるのです。典型的な症状はありますか?
結核初期の症状はカゼにそっくりなので見過ごしがちです
結核菌に感染し、防衛に失敗して発病すると、初期のうちはカゼに似た、痰、微熱、寝汗、だるさ等々の症状が出ます。さらに病状が進むと血痰がでたり、喀血したりします。菌はゆっくり、確実に肺を浸食し、空洞は大きくなり、最後は呼吸困難で死亡します。