2006年12月25日、結核予防会が記者発表実施! |
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2006年12月25日、財団法人結核予防会により、結核予防法を統合した改正感染症法の成立に際し広く国民にメッセージを発信するため、厚生労働省において記者会見が行われました。 当日は、新聞・テレビ・雑誌等の記者が集まる中、結核研究所石川信克所長等が、結核患者の高齢化や大都市の問題、集団感染の動向等の説明を行い、結核対策の重要性を訴えました。 |
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記者発表内容 | |
「結核の現状と今後必要な対策の強化について」 | |
石川信克 (財)結核予防会結核研究所長 |
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我が国における感染症の中で、未だ感染・発病者が毎年約3万人近い結核は、依然として国民にとって大きな脅威となっている。我が国の結核罹患率は、20世紀末の1999年の結核緊急事態宣言以降の対策の強化によって徐々に低減しつつあるが、先進欧米諸国に比較すれば30年程度遅れている。そして、今日の結核罹患状況の特徴は、以下に述べるように複雑化し、質的に変化している点にあり、迅速な対応と対策の強化が求められている。 一方、世界では毎年約900万人が新たに発病し、160万人が結核で命を落としており、最大の成人慢性感染症として働き盛りの世代を直撃している。このように、世界的な対策なしには自国の結核制圧はありえない状況下にあり、世界の結核対策は、「2015年までに結核の有病率と死亡率を半減させ、結核の罹患率を減少に転じさせる」という国連ミレニアム開発目標の達成を目指して、現在、新10ヵ年戦略として大きく動いている。 我が国においても、根絶の早期実現に向けて、こうした世界の取組とも連動しながら、我が国独自の要因分析をさらに徹底させ、広く国民共通の認識のもとに必要な対策を迅速に行っていく必要があり、結核予防会としても一層普及・啓発に努めていきたいと考えている。 1.我が国の結核罹患状況について−複雑化と質的な変化− ●先進欧米諸国より30年の遅れ 我が国の結核罹患率(1年間に登録された発病者の率で、人口10万対率で表す)は結核対策の成果によって減少し、2005年の罹患率は22.2人になったが、まだ結核中まん延国で決して安心できない。先進西欧諸国と比較すれば30年程度の遅れがあり、結核が公衆衛生上の問題でなくなるのはあと半世紀以上かかる。 ●進む患者の高齢化と低減しない若年者の感染・発病 新登録患者の高齢化が進み、塗抹陽性(喀痰の顕微鏡検査で感染性の高い結核菌が見られた)患者のうち、80歳以上が全体の25%、70歳以上は48%を占めている(70歳以上で約5500人)。そして、複雑化しているのは、このような高齢結核患者が精神疾患や重度化した糖尿病、あるいは透析を必要とする等、様々な合併症を持っている場合が多いことであり、その予後(病気の経過)は不良で、医療施設は患者管理にも大きな労力を必要としている。 また、20歳代、30歳代の罹患率の低減が非常に鈍く、新たな感染・発病が減少していない。ちなみに、20歳代、30歳代の塗抹陽性患者は約1600人、そのうち東京都は約300人(『結核の統計』より)であるが、その多くは感染源不詳のままである。 ●大都市高位、地域差拡大、特定リスク集団に集中の傾向と外国人、エイズ問題 人口10万対10以下の低まん延状況目前の長野県と大阪市で5.5倍、東京特別区、名古屋市、神戸市で3倍以上の格差がある。そして、長野県等では高齢化の問題、都市部では社会経済的弱者、外国人等のハイリスク者の問題が大きい。特に、ホームレス、飯場の労務者、無職、生活保護者など社会経済的弱者に結核患者が偏在している。 また、我が国は結核患者の中での外国人の割合は欧米先進国よりはるかに少ないが、今後の少子高齢化に伴う労働市場の開放が必要になれば大きな問題になると予想される。さらに、我が国は先進国で唯一エイズ感染者が増加しており、エイズ合併患者数の実態把握も急がれる課題である。 ●結核に対する関心の低下が集団感染等をもたらしている 集団感染事件が医療施設や高齢者収容施設で多発しており、また、由々しきことに、看護師・保健師の罹患率が一般の女性に比較して4倍以上となっている。端的に言えば、これらは結核に対する関心の低下がもたらしている発見の遅れ、診断の遅れと、医療施設等における感染防止対策が不十分なためと考えられ、結核予防会としてもその普及・啓発に努めていきたい。 2.今後必要な結核対策について 以上のような状況に対する、必要な対策および強化策は以下のようなものと考える。 1) 複雑化、質的に変化しつつある結核状況に関する分析・啓発 2) 高齢者・合併症結核患者への医療供給体制の整備 3) 集団感染等に対する健康危機管理システム(全都道府県での対応ネットワークシステム)の構築 4) ホームレス、外国人、エイズ等ハイリスク者対策の強化 5) 都市と地方の地域格差に対する対応 6) XDR-TBを含む多剤耐性結核(MDR-TB)の治療と対策、及び多剤耐性菌株の集中的管理と新たな抗結核薬の開発 など 記者発表資料 |
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「日本はまだ結核中まん延国,決して安心できない−結核問題の複雑化と質的変化、これからの課題−」 | |
「結核の基礎知識」 | |
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Updated 2007/01/9