日本では結核罹患率減少の鈍化や
近年の増加に転じた状況が問題と
なっています。アジアに目を向ける
と、シンガポール、香港など経済的
に発展し保健システムも充実した国
や地域でやはり罹患率減少の鈍化に
直面しています(図)。このため、
1999 年のIUATLD東部地域
会議の折にアジアの中蔓延国・地域
の疫学と結核対策に関する調査・研
究のネットワークが作られました。
図 |
|
今回2000年5月13日にIUATLDフォ
ーラムとして結核研究所で中蔓延国
会議が開かれ、日本(結核研究所)、
韓国、香港、マカオ、シンガポール、
マレーシア、ブルネイ、台湾の八つ
の国と地域からの参加者が各国の結
核の疫学・対策の状況について発表
し今後の活動について討議を行いま
した。会議には、厚生省結核感染症
課課長補佐の葛西健氏、IUATL
Dのハンス・リーダー氏、WHO西
太平洋地域事務局のドン・イル・ア
ン氏もアドバイザーとして参加され
ました。
|
アジアの結核中蔓延8カ国より参加
|
参加した国・地域では高齢者層で
罹患率が高いことが一般に認められ
ますが、特に日本、香港、シンガ
ポール、台湾で高齢者の占める割合
が高く、高齢者層と若年者層との罹
患率の差が大きい傾向が強く見られ
ました。また結核患者の高齢化によ
り合併症を伴う結核が多いことが、
日本、香港などから示されました。
結核とHIVの合併例の増加につい
ては、マレーシアから報告がありま
した。外国人結核患者の占める割合
は、日本と韓国を除く国では報告患
者のおおむね10%以上を占めている
ようです。今回の発表を見ると、中
蔓延国の中でも、共通するものとそ
れぞれの国・地域に特徴的なものが
あるようです。
このフォーラムは、結核研究所が
事務局となりIUATLD東部地域
の活動の一つとして継続されていく
予定です。今後は、まず罹患率減少
の鈍化傾向をより正確に分析するた
め、共通の調査方法で各国の疫学情
報を整理・分析することになってい
ます。将来的には、ヨーロッパのよ
うにアジア中蔓延地域に共通の結核
情報システムが作られることが期待
されるでしょう。また、予防内服の
あり方、ハイリスクグループへの集
団検診、DOTなども今後の討議課
題になっていくと考えられます。
|