結核緊急事態宣言

平成11年7月26日厚生大臣発表



公衆衛生審議会では6月30日に「21世紀に向けての結核対策(意見書)を提出し、それをうけて厚生省は平成11年7月26日結核緊急事態を宣言しました。

宣言文

 結核は、かつて我が国において国民病と言われる時代がありましたが、国民の生活水準の向上や医学・医療の進歩、結核対策に携わってこられた関係者の献身的な努力により、以前に比べて大きく改善してきました。このような状況の下、一般の国民のみならず医療関係者や行政担当者までもが、結核は既に我が国で克服された過去の病気であると錯覚してきたのではないでしょうか。結核は決して過去の病気ではありません。世界保健機関は、平成五年に結核の非常事態宣言を発表し、加盟各国に結核対策の強化を求めています。我が国においても、平成九年で約四万二千人の新規結核患者が発生し、約二千七百人が結核で亡くなるという我が国最大の感染症であります。さらに近年、多剤耐性結核の問題、多発する学校、医療機関、老人関係施設等における結核集団感染の問題、高齢者における結核患者の増加の問題、在日外国人における結核患者の問題等、緊急に対応を図らなければならない重要な課題が出現しております。また平成九年には、これまで減少を続けてきた新規発生結核患者数が三十八年ぶりに、罹患率が四十三年ぶりに増加に転じたことが明らかになっており、今後も引き続いて増加していく危険性が指摘されています。現在の我が国の結核の状況は、今後、患者数が増加し多剤耐性結核がまん延する等、再興感染症として猛威をふるい続けるか否かの分岐点に立っており、まさに今日、医療関係者や行政担当者を含めた国民一人一人が結核を過去の病気として捉えるのを改め、国民の健康を脅かす大きな問題として取り組んでいかなければ、将来に大きな禍根を残すこととなります。以上のことから、厚生省として、ここに結核緊急事態を宣言し、関係省庁、地方自治体や関係団体とともに、再興感染症としての結核問題の国民への普及啓発、健康診断を始めとする結核予防法に基づいた各種施策、結核発生動向調査事業や結核特別対策促進事業を強力に推進するとともに、国立療養所を拠点とする多剤耐性結核等への対応を含む専門医療体制を充実してまいります。国民各位や関係団体等におかれても、結核の問題を再認識し、次のような対策の推進に取り組まれることを要請いたします。

一 地方自治体におかれては、結核対策の最前線である保健所等の結核対策機能の強化、結核患者が発生した場合の危機管理の観点からの迅速かつ的確な対応、健康診断の実施の徹底等を図っていただきたいこと。

一 医師会及び病院関係団体におかれては、傘下会員等に対して、結核の基本的知識の再確認、結核診療技術の向上、院内感染の予防、結核患者が発生した場合の適切な対応に向けての周知等を図っていただきたいこと。

一 老人関係施設を始めとする施設の関係団体におかれては、傘下会員等に対して、施設内感染の予防、結核患者が発生した場合の適切な対応に向けての周知、健康診断の実施の徹底等を図っていただきたいこと。

一 結核に関する研究機関や関係学会におかれては、結核の診断、治療等に関する研究と研修のより一層の推進を図っていただきたいこと。

一 結核対策に取り組んでおられる各結核関係団体におかれては、正しい知識の普及を始めとする結核対策の推進により一層取り組んでいただきたいこと。

一 国民各位におかれては、結核に関する正しい知識を理解され、健康診断を積極的に受診されるとともに、咳が続くような場合には風邪だと思い込むことなく医療機関を受診される等、結核の予防に努めていただきたいこと。


 結核が国民病といわれていた時代に逆戻りさせず、国民の健康を結核の脅威から守っていくために、厚生省を始めとして関係省庁や地方公共団体、各種関係団体、国民一人一人が結核の問題を再認識し、我が国が一丸となって結核対策に取り組んでいくことが求められています。私は、国民の一人一人が結核対策に御協力いただくことにより、我が国の結核対策は必ず成功し、結核を克服することができると確信いたしております。重ねて皆様の御理解と御協力をお願いいたします。

 平成11年7月26日
厚生大臣 宮下創平

結核は
過去の病気ではありません。
年間新規発生患者数42,715人、死亡者数2,742人(平成9年)。これがわが国の現状です。
結核と気づかぬ人が多いから怖いのです。


対応を迫られる日本の結核の新たな問題点。

●国民、医療、行政の結核に対する認識の低下
●薬の効かない多剤耐性結核の出現
●続発する集団感染や院内感染
●高齢者の結核患者の増加
●結核まん延状況の地域間格差の拡大

結核の新規発生患者が増加し始めています。

減少を続けてきた新規発生結核患者数が、平成9年には38年ぶりに前年を上回る事態となりました。


結核の集団感染が増えています。

結核への関心や情報の不足からくる受診の遅れ、診断の遅れや対策の遅れから、学校・医療機関などでの集団感染が続発しています。


日本の結核の状況は先進諸国中では最下位クラス。

罹患率では1960年代前半のオランダに匹敵と、30年以上も遅れています。


すでに1993年、WHOは「結核非常事態宣言」を発表しています。

「今すぐに適切な手を打たなければ、今後10年間に3000万人の死亡が予想され、これは単一病原体による最大の死因である。」「保健衛生の中で結核が過去20年以上軽視された結果、多くの国で結核対策の組織が弱くなり、所によっては消失した。」(WHO・結核非常事態宣言より抜粋)


『結核予防はひとりひとりの注意から』

●国民へ・・・

結核はあなたの身近に迫っています。咳が2週間以上続くようであれば、風邪だと思いこまないで医療機関で受診しましょう。

●医療関係者へ・・・

咳や微熱が続く患者が受診した場合、結核も念頭に置いて診察をしてください。早期の診断が集団感染を防ぎます。

●保健所担当者へ・・・

結核患者が報告された場合、定期外健康診断を含めた積極的疫学調査の的確な実施と、その結果の迅速な報告が不可欠です。
    



パンフレット: 結核緊急事態宣言−結核の正しい理解と予防のために− 厚生省他発行より

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結核予防会事業部普及課(TEL:03−3293−9746)
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