第62回日本公衆衛生学会総会 10月22日〜24日/国立京都国際会館(京都市) |
新しい試みが豊富に!〜地元・京都での学会印象記〜
京都市左京保健所長
今井 弘行
本学会は平成15年10月22〜24日の3日間、京都市の国立京都国際会館で開催された。夜来の雨も上がり秋晴れの中、初日が京の三大祭の1つである「時代祭り」と重なり、時間配分に苦心の跡が見えるプログラム内容であった。地元開催のための役割もあって十分とは言えないが、第1会場と第3会場での印象をまとめ報告する。
◆市民参加◆
初日の午前に行われた開会式・会長講演・特別講演のすべてが一般公開された。フロアが会員と市民とを区分けしない自由席であったので、市民の出足の良さが印象的であった。中原学会長の「ヘルスプロモーションと健康政策」と題した会長講演は、ニーズが多様化する少子高齢社会にあることを公衆衛生の歴史から説き起こし、総会のメインテーマである「公衆衛生の新しい展開を目指して」が誰にも理解していただけるようなお話で、参加した全員に感銘を与えたと思う。
◆シンポジウム◆
シンポジウムは2日目に集中して開催された。メインシンポは「健康増進法成立下での健康日本21の推進」というテーマで前厚労省健康局長の高原氏の基調講演に続き、現場からの取り組みが紹介された。高原氏は、計画を策定して満足する従来型の行政ではなく、市町村は網羅的でない実行可能な計画とその評価手法の確立と公表の手順を決めることを求められた。
現場報告では、京都市内の豪雪の過疎地における高齢者世帯に対する除雪ボランティアの紹介があり、会場から驚きの声が上がっていた。
ほかに4つのシンポジウムがあったが、その1つの「たばこ対策の今後」では、多目的コホート研究成果をはじめとする各種のデータ紹介があり、日常の啓発活動のヒントが凝縮されていた。「たばこ対策」については、初日の総会で「たばこのない社会の実現に向けた行動宣言」を採択した。まず「我々の足下から始めること」として5つの基本方針が説明された。
◆一般講演(結核)◆
10題のコーナースピーチと30題のポスターの発表があった。コーナースピーチは、今回初の試みで、ポスターとの長所がうまく組み合わされていたが、会場の特性故の芸当であろう。写真で示すように3つのコーナースピーチと数多くのポスター発表が同時に進行し、しかもサービスヤードも同じフロアにありながら、お互いが邪魔せずに運営できたことに驚いている。
結核の40題の演目を私流で分類すると、学校検診の実施方法の変更に関する速報の1題、接触者検診8題、ツ反関連4題、途上国支援1題、DOTSは計11題であるが、細分すると、御当地の方法の紹介2題、患者支援5題、評価について4題の発表があり、いよいよ「DOTSは実施していて当然」の時代が近いという印象であった。また結核診査協議会の活用6題や、保健所に蓄積されたデータベースの活用6題が目についた。ただ、未だに発生動向調査のデータを片手間に入力しているとしか思えない保健所があり、全体の信頼性を損ねている現状を憂慮している。
結核研究所からの発表4題(重複1題)はこれからの方向を決定する指標となるので、引き続き注目している。
今度の学会は色々新しい試みが取り入れられたが、会場が4,000人の参加者を簡単に収容してしまい、すべてが余裕をもって運営できる能力を備えていたからこその特殊な学会として終わることなく、その試みの精神が引き継がれることを願っている。
Updated04/04/07