オーダーメイドのDOTSを始めました! 〜日本版DOTSの開発を目指して〜 |
DOTSを開始した結核予防会渋谷診療所 |
結核予防会渋谷診療所保健看護科長 深水 理子 |
外来DOTS導入までの経緯
ここ数年,院内DOTSを導入する病院が急速に増え定着しつつあります。しかし残念なことに入院中は確実に服薬できていても,退院して外来治療に移行すると服薬の継続が困難になり,治療を中断してしまうケースもあります。日々の外来診療のなかで種々のケース(例:ケース1,2)を通じ外来DOTSの必要性を感じ,また入院DOTSから外来DOTSへ繋げるパイプが確立されれば,より患者を治療完了へと導くことができるのではないかと考えていました。
また,山谷地区にある東京都の城北福祉センター健康相談室で,渋谷診療所が都の委託を受けて結核専門外来を30年近く担当してきました。その実績のもとに都の結核対策特別促進事業であるDOTS事業が日本で初めて平成9年9月より始まり,台東,荒川両区の保健所,福祉の協力の下これを担当し成果を上げていますが,今回当診療所でも平成14年12月16日から外来DOTSを導入することになりました。環境整備,予算面の問題等クリアすべき点は多々ありますが,スタッフの熱意を力に関連機関との連携強化,またDOTSを実施している他都市の情報を参考にしていきたいと思っています。
対象者は野宿生活者,簡易宿泊所居住者,1人暮らしの高齢者などの治療困難者とし,通院患者について本人の同意を得て看護師が実施。当診療所近辺の在勤者にも必要とされればDOTSを実施していく予定です。
今後の展開〜ひとりひとりを大切に〜
1人1人の患者のニーズに合わせた個々の方法での服薬支援,オーダーメイドのDOTS!既成の方法に捕われない日本版DOTS!大都会東京,渋谷の街の社会状況に適した方法を模索し渋谷診療所方式のDOTSを展開できればと思っています。
また,今後の社会状況,医療状況,診療所を取り巻く状況の変化に柔軟に対応し,通院による服薬支援から他の方法による服薬支援への展開も考慮していきたいと思っています。
ケース1 住所不定者。もう一歩という時点で治療中断。福祉事務所,保健所に問い合わせても不明であったところ、翌年の健診で要精密検査となり当診療所受診。スタッフに「○○さん,心配していたのですよ!」と声をかけられ無事2年がかりで治療完了。 |
ケース2 東京都の宿泊施設から通院していた糖尿病合併のケース。行方不明となり心配していた矢先,路上で外傷を負ったと救急隊から連絡が入り,排菌の可能性大のため東京都結核緊急医療ネットワークにて入院。その後死亡。 |