院内DOTSワークショップ報告
2003年2月1日/結核研究所
結核研究所対策支援部保健看護学科
科長代理 永田 容子
平成15年2月1日(土)、結核研究所において標記ワークショップを開催しました。
目的は@結核患者の入院中の効果的な患者支援及び退院後の地域との連携した支援方法策を探る、A先駆的に院内DOTSに取り組む病院看護職間の情報交換の場とする、Bすべての入院患者に対して確実な服薬支援を提供するための「院内DOTSガイドライン」の開発を行うことです。9医療機関(羽曳野病院、南京都・千葉東・東京等の国立療養所、神奈川循環器呼吸器医療センター、結核予防会複十字病院・新山手病院など)、3保健所、結核研究所(森亨所長はじめ職員6名)からの保健・看護職等25名、臨床医3名の計28名の参加があり、貴重な報告と討議を行いましたので報告します。
1.院内DOTS導入までに解決すべき事項
・院内DOTSの必要性−「服薬を習慣化し最後まで見届ける」ことについて、スタッフ間で共通認識させる。
・医師の協力と医局間の統一が必要である。 →患者の理解度(協力度)に影響する。
・看護師の意識:DOTSの正しい知識を持つこと。
・疑問が生じた時スタッフ間で話し合う場が必要である。
・薬剤師の協力:薬剤の1包化を推進すること。
・検査室との連携:菌検査結果の把握をシステム化すること。
・院内DOTSは院外(退院後)DOTSを含めて行われるべきである。
→保健所との連携・協力は不可欠である。
→退院後の保健所の患者支援を強化すること。
2.院内DOTS実施について
・対象:原則入院中の全結核患者とする。
・時間:朝食後、朝9時、10時、12時、13時など病院でとれる時間帯を決めておいて実施する。
・方法:看護師が入院全期間見届ける。
・薬は看護師が配薬/患者の手持ちなど確認チェック表・服薬ノート等の活用
・回数:1日1回(原則)
・看護師によって対応に差が出るのを予防する。 →院内DOTSガイドラインを作成し、活用する。
3.退院後の服薬継続支援
・病院と保健所との情報交換
病院面接記録/退院患者連絡/退院後訪問記録/菌検査所見
・退院後DOTSへの連携:外来/地域
個別の患者支援計画(具体的な服薬支援)
・服薬ノートなどの活用
・薬箱の工夫
4.保健所との連携
・DOTSカンファレンス
−患者の支援に必要な情報を交換する
−退院後の患者支援の具体的方法について話し合う
−一貫した支援の重要性を確認する
−形式にかかわらず医師と話し合う
・コホート会議(治療成績の分析)
・保健所の役割を明確にする
−退院後の服薬支援の継続
−地域資源の活用(介護保険、訪問看護ステーション等)と開拓
5.その他の情報交換・今後の課題
・医療機関同士の情報交換の場が必要
・外来の薬剤1包化(調剤薬局との協力)
・全国共通服薬手帳の整備(例:母子手帳)
・「院内DOTSのガイドライン」開発と同時に退院後の「地域DOTSのマニュアル」の整備は必須
(結核病学会保健看護部会の活用)
・法制度上のDOTSの位置づけ、医療インセンティブ
6.日本版DOTS戦略における保健看護専門職の役割
@「患者の治療完了の責任を持つ」ことを共通目標として、院内DOTSから院外(退院後)DOTSの継続を図る
ADOTSカンファレンス・コホート会議を通して、治療成功を阻む要因を取り除く
B地域DOTSが円滑に推進されるための責任と権限を担う
結核の患者支援に関わる保健看護職のワークショップに参加して:
これまでは病院同士の情報交換の場がなかったのですが、このようなワークショップの機会にお互いの顔を知り、意見交換ができたことは大きな収穫となりました。確実な服薬支援の1つの方法として、看護の連携で院内DOTS事業を広げ、成果を発表していけることを願っています。
患者さんの声・看護師の声 〜院内DOTSを実施している病院からの報告〜 |
今回のワークショップの情報交換の場で参加者から報告された、院内DOTSを実施している病院の患者さんの声、看護師の声を紹介いたします。 【患者さんの声】 ・服薬を見守られていることへの抵抗はない、医師の説明がよく分かる、病気のことがよく分かる、薬を飲まないといけないことがよく分かる。 ・退院後の不安要因は、仕事が忙しい、なんとなく、確認してくれる人がいない、外で飲むことに抵抗がある。 ・結核の薬はこんなに大事な薬なのだと思った、飲まない患者が中にはいるからDOTSが必要なのだなと思った。 【看護師の声】 ・退院後に服薬が終了した患者が病棟に来て、服薬完了したよと報告してくれる。 ・飲んでいると思っていた人が薬を捨てていたこともあり、DOTSにより具体的な服薬の状況が分かった。 看護師の意識も高まる。患者さんには病気や薬の知識がついてきた。 ・DOTS前とDOTS後で比較すると、DOTSを実施した患者群のほうが退院後の飲み忘れがない。 ・患者さんとのコミュニケーションがとれる。 |
Updated03/08/08