変わるツベルクリン・BCG・健診

〜厚生科学審議会感染症分科会 結核部会・感染症部会の
共同調査審議に係る合同委員会報告書まとまる〜

 平成14年5月29日、標記合同委員会が開催され、3月20日に結核部会より報告された「結核対策の包括的見直しに関する提言」の中で議論が残されていた「乳幼児及び小中学1年生に対するツ反検査の是非」について、「廃止」とする最終審議がまとまり、6月5日、感染症分科会に報告書が提出されました。今後は感染症分科会にてさらに議論を深めていくこととなっています。
 定期健診・予防接種に関する制度改正の提言のポイントは下記(表)の通りです。


表  定期健診(ツ反検査含む)・予防接種(BCG)に関する制度改正の提言のポイント

対象 現在 提言 改正の理由 補完策等
乳幼児 ツ反検査を行い、陰性者のみにBCG接種
(勧奨)
原則として生後6ヵ月までにツ反検査を省略したBCG接種を実施 ◎乳幼児・学童・生徒の結核罹患率が著しく減少
 (0〜14歳の結核罹患率(人口10万対)は1962年:205.1→2000年:1.2に減少)
・乳幼児のツ反のスクリーニングを用いた健康診断は、患者発見率が極めて低い(0〜3歳の発見率が10万対1.1。ツ反検査実施者120万人中、発見患者13人)。
・偽陽性のため不必要な再ツ反・予防内服・精密検査をすることがなくなる。
・偽陽性のためBCG接種の機会を失うことがなくなる。
・既感染者への接種によるコッホ現象はそれほど強いものではない。
・乳児への正しいツ反は技術的に困難。
・BCG接種率・接種技術を高める
・1歳6ヵ月児や3歳児健診で瘢痕を確認し、未接種者には早急に接種を勧奨
・家族に患者が発生した場合等の接触者健診の充実
他の予防接種との日程調整等、実施条件の具体的整備
小学1年生 ツ反検査を実施し、陰性者にはBCG接種、強陽性者等に精密検査
ツ反検査、BCG接種共に廃止
・小1生のツ反のスクリーニングを用いた健康診断は、患者発見率が極めて低い。
・BCG再接種の医学的効果は明らかになっていない。
・再接種によるツベルクリン反応の陽転化が結核感染の診断の妨げになっている。
・諸外国では再接種を廃止する国が多くなっている。
・有症状時の早期受診
・喀痰検査の普及を図る
・早期診断(第一線の医療機関に結核を積極的に疑うよう啓発)
・患者が発生した場合の接触者健診を充実、強化し、感染源や感染経路の究明や患者接触者の把握等を目的とした積極的疫学調査を行うことを徹底
・社会的弱者や基礎疾患合併患者などのハイリスクグループや特定地域への結核の偏在への対策を強化する
中学1年生 ツ反検査を実施し、陰性者にはBCG接種、強陽性者等には精密検査
ツ反検査、BCG接種共に廃止 ・中1生のツ反のスクリーニングを用いた健康診断は、患者発見率が極めて低い(10万対1.0。2000年発見患者21人で、ツ反検査実施者120万人中、発見患者13人)。
・すでに2回以上のBCG接種歴を有する者が多いため強陽性と判定される割合が高い(不必要な予防内服・精密検査がなくなる)。
・中1でのツ反がブースター刺激になりその後のツ反が増強するため、接触者健診におけるツ反結果の解釈が困難となっていた。
15歳以上・40歳未満のローリスク層 16歳、19歳以上は年1回胸部X線検査 入学時、転入時、就職時、転勤時など、節目時のみ胸部X線検査 ・罹患率が減少
・患者発見率が低い(平成11年地域保健事業報告によると、地域検診患者発見率0.013%、職域健診患者発見率0.007%)。
15歳以上・40歳未満のハイリスク・デインジャー層 年1回胸部X線検査
受診率が極めて低い
年1回胸部X線検査の確実な実施 ・ハイリスク層については、罹患率が非常に高い。
・デインジャー層については、発病すると二次感染を起こす割合が高い。
・偏見・差別が生じないよう配慮
・一部職種にはツ反検査
40歳以上 年1回胸部X線検査 年1回胸部X線検査 ・年齢が高いほど罹患率が高いことから、現行どおり ・寝たきり者等X線診断が困難な場合は積極的に喀痰検査

(文責 編集部)


Updated 02/10/18