第1回WHO西太平洋地域
結核制圧技術諮問会議


結核研究所国際協力部企画調査科長

須知雅史


WPRO結核制圧技術諮問会議。
70名以上の参加者を集め、円卓で行われた。


 2月21〜24日、フィリピンのマニラにある世界保健機関(WHO)西太平洋地域事務局(WPRO)において、第1回結核制圧技術諮問会議が、日本政府の支援のもと開催されました。

 目的は、@WPRO管内における結核の現状とその対策活動を吟味し、A同地域の到達目標を含んで作成された「西太平洋地域における結核制圧のための戦略計画」の案を評価すると共に必要な提言を行い、B「結核制圧特別プロジェクト」の地域目標を達成するために必要な資源を明らかにし、様々な支援国・団体との協力可能な領域を明らかにするなどでした。

 参加者は、結核研究所森所長を議長とする技術諮問委員、14の国と地域の結核対策責任者、そしてJICAをはじめとする先進諸国の政府系援助団体、日本の結核予防会をはじめとするNGO 、世界銀行などの開発銀行、UNICEFなどの国連機関の代表、さらにWHO本部のストップTBイニシアティブ事務局のメンバーなど、70名以上に及びました。

 今回の会議が開催された背景は、@西太平洋地域から世界の結核患者の約30%が発生し、HIV感染の影響は現時点では小さいものの、カンボジアではその影響は既に大きく、中国、マレーシア、ベトナムなどいくつかの国々では大きくなりつつある、Aしかし、WHOの推奨するDOTS戦略を実施する地域からの患者の届出数は、全届出患者数の5割にも満たない、Bそこで99年9月、マカオで開催されたWPROの委員会で「結核危機」が宣言され、Cそれを受けて、WPROの尾身茂事務局長は結核対策を最優先課題とし、「西太平洋地域における結核制圧」を特別プロジェクトとした、というものです。

 会議では西太平洋地域の結核の現状について分析・評価を行い、今後の対策について意見が集約されました。その内容を以下に示します。@結核は最も経済的生産性の高い青壮年層の主要死因であり、貧困層に集中している、Aその対策が進展しない理由は、政府の意欲の欠如、患者管理の基本原則の軽視、HIVの蔓延、多剤耐性の出現である、Bしかし、DOTS戦略によって結核は制圧可能であり、加盟各国はDOTS戦略を採用し、全国のすべての地域に拡大すべきである、Cそのため、結核対策に関係する様々な組織間の調整委員会を設立することは、政府の積極的な関与とその努力を示す意味で重要である、D05年までに、DOTS戦略が実施されている地域からの結核患者の届出が推定患者発生数の70%に達し、その治療成功率が85%以上に維持されるべきである、Eもしこの目標が達成されたならば、 西太平洋地域では10年までに、結核の罹患率と死亡率を半減させることができるであろう。

 ストップTBイニシアティブが、具体化されてきたと実感する会議でした。


 

Updated 00/07/14